歯科医師の過剰が言われて久しいですが、厚労省が過剰であるとの推計をまとめました。そのため歯科医師国家試験の合格基準の引き上げも検討するというものです。
「歯科医、2029年には1万4千人過剰…合格基準引き上げも検討」(ヨミドクター2016年12月13日)
「歯科医師が2029年に約1万4000人過剰となるという推計を厚生労働省がまとめた歯科用インプラント装置 。厚労省は文部科学省と連携し、歯学部定員の削減や国家試験の合格基準引き上げを検討する。」

 コンビニの数より多いと言われる歯科医師ですが、この歯科医師過剰問題は今に始まったことではありません。
 増員政策から始まり、その後、過剰と言われ始めた時期から今日に至っています。
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昭和44年 目標値「人口10万人当たり歯科医師数50名」(閣議決定)
 この時期には予防医学のような発想はありません。虫歯になる子どもらの増加に対して歯科医師の増員でもって対処しようとしていましたアマルガムミキサー

昭和59年 人口10万人当たり52.5名に達する。
 昭和44年の閣議決定は、このとき達成しました。しかし、歯科医師の増員に歯止めを掛けるような政策は実施されませんでした。

昭和61年 「将来の歯科医師受給に関する検討委員会」(旧厚生省) 新規参入歯科医師を20%程度の削減を示す

昭和62年 旧文部省 大学歯学部・歯科大学入学定員の20%削減目標を示す

平成10年 「歯科医師の需給に関する検討会」(厚労省)
      更なる10%程度の削減が提言されました。

平成18年 厚労相・文科相が歯科医師の養成数の削減等に一層取り組む「確認書」

平成18年 厚労省「今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会」中間報告書

平成21年 「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」(文科省)
 入学者の確保が困難な大学等に関して入学定員の見直しを検討

平成24年 人口10万人当たり78名
    一向に減る兆しがありませんエアモーターセット

平成26年 歯学部定員2447人
   昭和62年に目標が設定されてから、ようやく27.2%削減、但し、国立が35%を削減した結果であり、私学での定員削減は進んでいません。

歯学部定員削減状況

 厚労省は歯科医師国家試験の基準を引き上げることも検討するということですが、現状でも実はかなり歯学部の学生の水準の厳しさが指摘されています。
 歯学部は6年で卒業ですが、その6年で卒業して歯科医師国家試験の合格までストレートで達成できる学生の割合は決して高くありません。
 国立大学で64.8%、私立大学で42.2%です。

最低年銀歯学部

 水準を引き上げて抑制するということになると、さらにこの数字が悪化してくことになります。
 私学の歯学部はもっとも学費が高い学部ということにはなっていますが、私立歯学部はこのような学費やその他寄付金によって成り立っています。歯科医師の子の入学先として確保されているということもでもあり、遅々として定員削減が進まない原因でもあります。

 歯科医師会も業界団体として削減にむけて活動はしています。
「歯科医師受給問題の経緯と今後への見解(PDF)」(平成26年10月)

 しかし、その「政治力」についても万能ではなく、その過程で日歯連事件(2015年10月)なども起きていますが、歯科医師会(厚労省)と私立歯学部(文科省)との対立構造があります。
 明らかな過剰でありながら、なお国費を投じての人材養成にどれほどの意味があるのか、法曹養成制度と対比してみても憂うべきものがあります。
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